

銀座の中心地に建つ別荘、ギャラリーの中に暮らすようなアートコレクターの家、 インド洋を望むスリランカの終の棲家といった、近年手掛けた建築にまつわるエピソードを交えながら、安藤忠雄氏が建築を手掛ける際の原動力、プロセスにおいて大切にしていること、想いをお話いただきました。「家は生き物」との安藤氏 の言葉が心に響きます。本誌をご覧の皆さまにも、ご自身の建てる家を愛しみ育てていただきたいと願います。
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どう住みこなし、育てていくか
竣工からはじまるスタート

建築を紹介する雑誌では、建ったばかりの時に写した竣工写真が使われるのが普通ですが、別に建築がそこで「終わる」わけではないんですよね。それは単につくるプロセスの終わりであって、そこから今度は建物を「使う」プロセスが始まるわけですから。私はそこで大切なのは建築を「育てる」意識だと思っています。 日本の不動産市場では建物の築年数の多さをマイナスのように言います。確かに、建築も庭の緑も、そのまま放っておいたらダメになってしまうでしょう。そこで、いつも気にかけて樹木に水をやったり、建物に傷んだ箇所があったらメンテナンスしたり、機能的な不足を感じるようになったら、思い切って増改築する。そうして丁寧に愛情をもって育てていくと、建物の経年変化は「劣化」ではなく「進化」「成長」になるんですね。
美しく年を重ねた建物は、新築とはまた異なる価値を持つようになります。建築を消耗品ではなく資産と考える、ヨーロッパでは当たり前の感覚が日本で未だに根付かないのは、ずっと木造でやってきた歴史とか地震大国といったバックグラウンドの違いによるもので、仕方ない部分はあるのですが︱これから家をつくろうという方には是非、どんな家をつくるかというのと同じくらい、完成後、どう住みこなしていくか、どう育てていくかということもしっかり考えてほしいですね。
竣工はゴールではなく、そこから始まるスタート。住まい方次第で30年後の姿も全く違うものになる。家は生き物ですから。



安藤 忠雄 氏
1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年安藤忠雄建築研究所設立。「都市ゲリラ」として建築設計活動をスタートして以来、常に既成概念を打ち破るような建築を追求してきた。1990年代以降は、その活躍の舞台を世界に広げる一方、環境再生や震災復興といった社会活動にも取り組む。79年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、85 年アルヴァ・アアルト賞、93 年日本芸術院賞、95年プリツカー賞、02年アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル、05年国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル、10 年文化勲章、13年フランス芸術文化勲章コマンドゥール、15 年イタリアの星勲章グランデ・ウッフィチャーレ章、21 年フランスレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールなど受賞多数。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。97年から東京大学教授、現在、名誉教授。7月21日まで、グラングリーン大阪 VS.にて「安藤忠雄展︱青春」を開催中。
『安藤忠雄展︱青春』
安藤忠雄の半世紀に及ぶ挑戦の軌跡から現在の仕事までを一望する展覧会。代表作「水の教会」の原寸大での再現、立体映像による没入型展示など見どころ多数。
会期:2025年3月20日(木)~7月21日(月)
会場:VS.グラングリーン大阪 (大阪府大阪市北区大深町6の86)
安藤 忠雄 氏

1941年大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年安藤忠雄建築研究所設立。「都市ゲリラ」として建築設計活動をスタートして以来、常に既成概念を打ち破るような建築を追求してきた。1990年代以降は、その活躍の舞台を世界に広げる一方、環境再生や震災復興といった社会活動にも取り組む。79年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、85 年アルヴァ・アアルト賞、93 年日本芸術院賞、95年プリツカー賞、02年アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル、05年国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル、10 年文化勲章、13年フランス芸術文化勲章コマンドゥール、15 年イタリアの星勲章グランデ・ウッフィチャーレ章、21 年フランスレジオン・ドヌール勲章コマンドゥールなど受賞多数。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。97年から東京大学教授、現在、名誉教授。7月21日まで、グラングリーン大阪 VS.にて「安藤忠雄展︱青春」を開催中。
『安藤忠雄展︱青春』
安藤忠雄の半世紀に及ぶ挑戦の軌跡から現在の仕事までを一望する展覧会。
代表作「水の教会」の原寸大での再現、立体映像による没入型展示など見どころ多数。
会期:2025年3月20日(木)~7月21日(月)
会場:VS.グラングリーン大阪 (大阪府大阪市北区大深町6の86)
https://vsvs.jp/exhibitions/tadao-ando-youth/