職人の手の痕跡及び木材の個性を活かしながら
三角形の敷地を生かし緊張感のある空間を創造
計画地は、1本の水路によって周辺から切り離され独立した印象を持つ、鋭角な三角形。「シンプルで飽きないこと、お気に入りに“さりげなく”包まれて、気分が上がる空間を」という施主様の要望をベースに、工業製品の使用を極力抑え、左官職人の手仕事の痕跡、コンクリート杉板型枠の人工的でない自然な質感など、職人の手業が随所に光る邸宅だ。
ゲートをくぐり周囲から閉ざされた敷地内に足を踏み入れると、上空へと抜ける開放的な視界が広がり、プリミティブで重量感のある持ち上がった塊の下をくぐる視線の通りは、ガラスを介しギャラリー的な動線に設えた杉型枠コンクリート壁で遮断されることで、更に奥行きの深さを暗示する。
また、土地の特徴を引き出した空間を立体的に施主様の好みと融合させ、屈折壁とフラット壁を対比させ陰影を活かした簡潔な外観を構成し、2階リビングを中心に間取りを計画している。建物内外を貫く敷地ライン、風の通り道に沿って設けた幾本のシンプルな動線は、室内から敷地の隅々までの視線が得られる様に工夫され、居住者各自のプライベートな好みの空間へと意匠性を伴いグラデーションの様に変化する。庭や借景との繋がりのあるゾーニングが空間に深みを与え、更なる寛ぎの空間へと導いている。
同邸宅を手掛けた〈株式会社YAD 一級建築士事務所〉は、 “建築の中でも、住宅はとりわけ人間味濃い建物である”という考えのもと、魅力ある一軒を生みだす設計事務所だ。代表の河野洋一氏は、ご家族一人ひとりの感性を引き出すことで、高揚感の得られる工夫を、また、無意識のうちにそっと寄り添ってくれるような居心地の良さを、建物の中に吹き込んでいく。
満足度の遥か上を行く唯一無二の世界観で生み出される至高の邸宅を、次はご自身が同社と共に創り上げていただきたい。