クライアントとのセッションを重視
こだわりに、こだわりを重ねる設計姿勢
ご紹介するのは、広大な敷地に建つ有機的な要素を感じる邸宅。一方のクールな邸宅の間口は、わずか3間。全く異なる個性を持つ2邸を手掛けたのは、ミサワホーム北海道株式会社内に2010年誕生の建築設計ユニット〈MooS(ムース)〉だ。
札幌・東京を拠点にし、個人住宅を中心に、集合住宅、宿泊施設、店舗などの設計を手掛ける〈MooS〉は、ひとりの建築家を中心とした設計事務所とはやや異なり、さまざまな設計キャリアを持つ、独立した設計士の集まりであることが特長の一つ。それ故に、固定のベクトルに偏ることなく、構造・意匠・ 機能・空間など、常にクライアントのご要望を最優先に具現化していくことが、設計するうえでの大前提にある。
前半ページの邸宅は、北海道の根源的かつ有機的な空気を感じるエレメントを各要素に落とし込み、それらが際立つよう建物全体は硬くエッジを感じる構成で考えられている。印象がハードになりすぎないように、天井の羽目板など柔らかさを感じる素材でバランスを。また、有機的な要素をインテリアなどの部分だけに限定するのではなく、建築の大きな面やパーツでも取り込む事で、インテリアと建築の境界は緩やかにつながる。陽射しが舞い込むデイタイムと照明によって浮かび上がる日没後の空間の表情の違いも楽しめるように計画されている。
後半ページの邸宅は、間口が3間という条件の土地でありながら、視覚的な息苦しさを感じさせない設計が秀逸だ。何層もの透明な膜を視線が縦横無尽に抜け、透過する構造とすることで、内と外という相対する感覚が薄れ、ここがどこであるかという感覚を失い、意識は遥か異世界へとトランスする。磁器質タイルの床、ガラスタイルの壁面、全て白の鏡面塗装で統一された建具等、無機質なマテリアルと照明によって、空間の美しさがより鮮明に。
それぞれのお客様に真摯に向き合い対話を重ねるからこそ見えてくるものがある。そのお客様のためだけの空間・意匠性を丁寧に積み上げてこだわり抜く〈MooS〉と、唯一無二の建築を実現させていただきたい。